少年犯罪

楽器店・ショーウインドー・前(夕)

   小林靖文(15)がショーウインドーに

   貼りついて、中の商品を眺めている。

 

同・中(夕)

   中学生ほどの子供が、ギターを手に持って
父親におねだりしている。

父親が子供に近づき、店員を呼んで
布からお金を取り出す。

 

同・外(夕)

ショーウインドーに貼りついている、

靖文、ため息をついて、とぼとぼと店を後にする。

 

小林家・外観(夕)

ボロボロの平屋。

買い物袋を持った靖文がため息を付く。

 

同・中(夕)

小林正晴(52)が一升瓶片手にテレビを寝転んで見ている。

入り口が開いて靖文が入ってくる。

チラッと靖文の方を見る、小林。

靖文が袋から酒を取り出して、小林に渡す。

立ちあがり、靖文からお酒を分捕る、小林。

呆然とその様子を見ている、靖文。

横たわり酒を飲み出す、小林。

レシートと小林を交互に何度も見る靖文。

横たわって酒を飲んでいる、小林。

ため息をついて、奥へ消えていく靖文。

 

道(早朝)

汗をかきながら、自転車で新聞配達をしている靖文。

 

楽器屋(夜)

ショーウインドーに貼りついて見ている靖文。

ポケットから、銀行の封筒を取り出して中身を見る靖文。

封筒の中には現金。

ギターを見て、笑顔になる靖文。店内へ入ろうとすると、靖文の手首を掴む手。

靖文が振りかえると、小林が封筒を靖文の手から奪って、
笑顔で中身を覗い
ている。

靖文「やめてよ。父さん」

小林が、靖文を突き飛ばす。

高笑いしながら、小林が封筒を手に、

去っていく。

道にうずくまり、ギターを見つめながら、泣き出す靖文。

楽器店から出てきた、梱包された楽器を持った中学生が、
靖文を見つめる。

   

小林家・中(夜)

靖文がうつろな表情でテレビを見つめている。玄関から、
物音がして、靖文
が振りかえる。

顔を真っ赤にして、千鳥足の小林が
関から入ってくる。

小林「おう。靖文。お前、ちょっと出て行け」

小林の脇から若い、東南アジア系の女性が顔を出す。

東南アジア女性「ハヤクー」

小林が靖文の腕を引っ張る。

 

同・外(夜)

小林家のドアが開いて、中から靖文が

放り出される。

地面に投げ出され、家を見つめる靖文。

小林家の明かりが消える。

   

道(夜)

泣きながら歩いている靖文。

 

公園(夜)

ブランコに静かに座っている靖文。

 

小林家・中(深夜)

扉が静かに開いて、靖文が中へ入っていく。

一つの布団に裸で寝ている、小林と東南アジア女性。

玄関の脇にある、台所の戸棚から、
丁を取り出す靖文。

月明かりで、包丁が光る。

寝息を立てている、小林。

顔からすさまじい量の汗を流している靖文。

激しく震える、包丁を持った、靖文の手。

小林の枕元に立ち、包丁を振り上げる靖文。

小林が寝返りを打ち。

小林「靖文―」

寝言を言う、小林。

靖文のほほを涙がつたう。踵を返して、家を出て行く、靖文。

小林「お釣りたんね―ぞ」

寝返りを打つ、小林。

 

道(深夜)

靖文が包丁を握り締めて、泣きながら、

走っている。

 

楽器店・前(深夜)

背中を丸めて、呼吸を整えている靖文。

靖文が顔を上げると、楽器店のショー

ウインドーにギターが置いてある。

ショーウインドーに近づく靖文。

辺りを見まわす靖文。

物音のしない、周辺。

 

同・中(深夜)

真っ暗な店内にギターを弾く音が響く。

嬉しそうに、店の真中でギターを弾く靖文。

割れているショーウインドー。

靖文の顔に懐中電灯の光が当たる。

まぶしそうにする、靖文。

逆光の中に、橋本正治(56)が立っている。

靖文に襲い掛かる橋本。

激しく揉みあう、橋本と靖文。

橋本「あ!」

靖文「あ!」

橋本のおなかに突き立てられた、包丁。

橋本が静かに膝からその場に崩れ落ちる。

呆然とその場に立ち尽くす、靖文。

 

同・外(深夜)

サイレンを鳴らしたパトカーが、店の前に止まる。

スタジオ

吉沢博美(38)がニュース原稿を手に取り。

博美「続いてのニュースはまたしても青少年

 犯罪です。現場から伊藤美鈴がお伝えします」

画面に目線を向ける、博美。

 

楽器店・前(朝)

伊藤美鈴(25)がマイク片手に。

美鈴「はい。現場の伊藤です。昨夜未明こち

らの楽器店のショーウインドーが割られ」

割られたショーウインドーを指す美鈴。

美鈴「不審な物音に気づいた店主の橋本正治

さんが様子を見に行った所、現場にいた男

に包丁で刺され。通報でかけつけた警官が

現場に到着した時、橋本さんはすでに帰ら

ぬ人となっていました。しかも驚いたこと

に犯人は中学生だったのです」

カメラが割られたショーウインドーに

向けられる。

 

学校

校長が頭を下げている。

校長「申し訳ありませんでした」

「少年が通っていた中学校の校長」のテロップ。

 

公園

顔にモザイクがかかった中学生。

中学生「友達?いたのかなぁ?おとなしい奴

でしたよ。あぁ何かギター欲しいとか言っ

てたよ」

「少年の同級生」のテロップ。

 

玄関先

顔にモザイクがかかった、主婦。

主婦「おとなしい感じの子でしたよ」

「近所の住民」のテロップ。

 

小林家・玄関・前

顔にモザイクのかかった小林。

小林「あの子が勝手にやったことなんだから」

「少年の父親」のテロップ。

家のドアを閉める、小林。

 

スタジオ

博美が原稿を見て。

博美「近年急増する少年犯罪ですが。浅野さ

ん少年法の改正が世間では叫ばれていますが」

身を乗り出す浅野公平(58)。

浅野「大体今の少年法は被害者の立場に立っ

ていないザル法ですよ。今回の事件は物盗

りでしょう?更正よりも処罰の対象にすべ

きですよ」

ドンと机を叩く、浅野。

博美「さてCMの後は大好評のファッション塾。
今日のテーマは授業参観」

画面に向かって笑顔の博美。


終わり(>_<)

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