支配者 1

○空(夜)
町がイルミネーションで輝いている。
林田雄飛(26)が空を飛んでいる。
林田「あれ?何で俺、空を飛んでいるんだ?」
林田の後ろから光が輝く。光の中から神様が出てくる。
神様「お前の望みは何だ?」
林田「わぁ!びっくりした!何だよ!急に!?」
神様は顔色一つ変えずに林田に問いかける。
神様「お前の望みは何だ?」
林田「何でもいいのか?」
神様「その質問に答えるのが、お前の望みなのか?では答えてしんぜよう…」
林田「ちょ、ちょっと待った…」
神様「待つのが、お前の望みなのか?では…」
林田「俺を世界の支配者にしてくれ!みんな、全部、全てのことが俺の思ったとおりになる世界に!」
神様「…」
林田「どうだ!出来るのか?やれるもんならやってみろ!俺を中心に世界が回るようにしてみろ!!」
神様がニコッとほほえむ。
神様「何だ、そんな事か。そんなことならお安いご用だ。その望み叶えてしんぜよう」
神様の指先から閃光が走る。
林田「あああ…」

○健康荘・外(朝)
ぼろぼろのアパート
林田の声「ああああ!!」

○同・中・林田の部屋・前(朝)
部屋の扉に【林田】と書かれた表札がつけられている。部屋の中から林田の声がする。
林田の声「ああああ!!」

○同・中・同・中(朝)
林田が布団から飛び起きる。
林田「あああああ!!」
林田が辺りを見回す。
四畳半の部屋。
ゴミが入ったコンビニの袋があちこちに散らかっている。
口の開いた缶コーヒーの缶があちこちにおいてある。
台所には洗っていない食器が山積みになっている。
林田「夢か…」
隣の部屋と境目の壁が叩かれる。
声「うるせえ!!」
林田「あっ、すいません」
林田がテレビのスイッチをつける。
テレビではニュースがやっている。
テレビの声「昨夜は60年ぶりに○○流星群が、戦後初めてやってきました…」
林田がテレビの音量を上げる。
林田「…そういえば昨日…」

○同・林田の部屋・中(夜・回想)
林田が窓から夜空を眺めている。
夜空には流星。
林田「願い事でもしてみるかな…」
林田が夜空に向かって両手をあわせて願う。
林田「願い事をお叶え下さい。お叶え下さい。お叶え下さい」

○同・林田の部屋・中(朝)
林田が窓の外を眺めている。
林田「…だから昨日、あんな夢を見たのか」
隣の部屋と境目の壁が叩かれる。
声「うるせえ!!」
林田「すいません」
林田がテレビの音量を下げる。
林田「ったく、テレビくらい好きな音量で見させろよな」
テレビの声「それでは先日起きました、ひろゆきちゃん、失踪事件の続報です。ひろゆきちゃん、五歳が近所のスーパーにおつかいに行ってから、行方がわからなくなって今日で一週間が過ぎました…」
林田「…そうなんだ」
テレビでは、ひろゆきちゃんの両親が涙で会見をしている。
テレビの声「本日、ひろゆきちゃんの、ご両親が会見を開いております。その模様を生中継でお送り致します」
ひろゆきちゃんの父親「ひろゆき、早く戻ってきなさい」
ひろゆきちゃんの母親「お願いします。ひろゆきを返してください」
母親が泣き崩れる。
ひろゆきちゃんの父親「おい。誘拐されたわけじゃないんだから…」
林田「警察も誰でもいいから早く捕まえればいいのにな…よし。そろそろ出かけるか」
林田がのびをしてから、テレビのリモコンを手に取ってテレビを消そうとする。
テレビの声「事件に進展がありました。たった今、犯人を捕まえたとの情報が警察から入ってきました。繰り返します…」
林田の手が止まる。
林田「まじ?」
林田がテレビの音量を上げる。
テレビの声「捕まったのは未確認ですが…え?…う、うちの番組のスタッフです」
テレビにマイクを持ったリポーターが警察に取り押さえられている姿が映る。
リポーター「え?何ですか?私、ここに今日、初めてきたんですけど…ちょっと、何するんですか!」
リポーターが警察に連行される。
林田「何なんだ…」
林田がテレビのリモコンと隣の部屋との仕切りの壁を見つめる。
林田「もしかして…」
林田がテレビの音量をめいいっぱい上げて、隣の部屋の様子に聞き耳をたてる。
隣の部屋から音は聞こえない。
林田が窓を開けて隣の部屋の様子を見る。
隣の部屋の住人が窓のへりに座ってたばこをふかしている。
隣人「何見てるんだよ?」
林田「いや。何でも無いです」
林田が窓を閉めて手を合わせる。
林田「…神様!!」


次へ

戻る

トップページへ