昔の記憶 第二話
○鈴木家・実の部屋(朝)
実と愛が部屋に戻ってくる。
みんなまだ部屋にいる。
実が壁に掛かっている時計を見る。
時計は10時を指している。
実「みんなさ、仕事と行かなくて大丈夫なの?」
和子「仕事って?」
実「え?だって、もう10時過ぎてるし…」
和子「…それは…」
愛「(遮って)いいのよ。みんな休みをもらってるのよ。だってお兄ちゃんがこんな状態なのに仕事なんて出来るわけ無いじゃない。(家族に向かって)ねえ」
清「あっ、当たり前じゃないか」
大輔「そうだよ。そんな、仕事なんかしてられるかっての」
和子「ホントよね」
家族で笑い出す。
家族「ははっはははっはは」
実「…俺は…」
愛「ん?」
実「どうして記憶を無くしてしまったんだ?」
家族の笑い声がやむ。
清「…本当に覚えてないのか?」
実がうなずく。
大輔が実の肩に手を置く。
大輔「世の中には知らなくても良いことってのもあるんだよ」
和子「そうよ。今は無理して思い出さなくってもいいんじゃない」
愛「お医者様も確かそんなこと言ってたわよね(家族に向かって)」
和子「言ってた」
清「言ってたな」
大輔「確かにそんなこと言ってたな」
実「…」
愛「今は、焦らずにゆっくり治していこうよ」
実「わかった…そうだね」
和子「そうだ!ちょっと家の中を見て回れば?何か思い出すかもしれないから」
清「それはいいな」
大輔「愛が案内してきてあげなよ」
愛「わかった。行こっ!」
愛と実が部屋を出て行く。
○同・二階廊下(朝)
愛「二階はみんなの部屋があるの」
和子「突き当たりはトイレね」
実「はぁ」
愛「それはさっき説明したよ。トイレの隣が母さんの部屋ね」
○同・和子の部屋(朝)
愛が扉を開けて実に部屋の中を見せる。部屋は洋風だが壁に立派な日本画が飾ってある。照明以外の電化製品は見あたらない。
○同・二階廊下(朝)
愛「母さんの部屋の隣が父さんの部屋。(大きな声で)父さぁん!部屋入るよ!」
清の声「荒らすなよぉ!」
○同・清の部屋(朝)
愛が扉を開けて実に部屋の中を見せる。和子の部屋と同じような間取りの洋風の部屋。壁に立派な日本画が飾ってある。照明以外の電化製品は見あたらない。
○同・二階廊下(朝)
愛「父さんの部屋の隣は大輔兄ちゃんの部屋。(大きな声で)大輔…」
大輔の声「入っていいよ!」
○同・大輔の部屋(朝)
愛が扉を開けて実に部屋の中を見せる。和子や清の部屋と同じような作り。壁に日本画が飾ってある。
○同・二階廊下(朝)
実「何か…」
愛「ん?どうしたの?」
実「いやっ、何でも無い」
愛「それでぇ、ここの部屋が私の部屋。見たい?女の子の部屋だよ」
実「あ、いいや」
愛「そう。じゃあ、次は一階を案内するよ」
○同・階段(朝)
愛と実が階段を降りていく。階段の踊り場に日本画が飾ってある。
実「何か、絵がいっぱい飾ってあるよね」
愛「そうかしら?」
実「そうだよ…」
愛「(無視して)一階はリビングとキッチンとバスルームがあるの」
愛が一階に降りる。
○同・一階廊下(朝)
愛「お兄ちゃん。早くおいでよ」
実「ああ」
実が階段を降りる。
愛「お兄ちゃん。お風呂入って来なよ。全然入ってなかったでしょ?」
実「ああ、覚えてないけど…」
愛「はははっは(笑)そうでした(笑)いいから入って来なよ。背中流してあげようか?(笑)」
実「からかうなよ。わかった、入ってくるよ」
○同・バスルーム・前(朝)
愛「お風呂は沸いてるから、もしぬるかったら追い炊きボタン押したらすぐに温かくなるからね」
実「わかった」
実がバスルームの扉を開けて中に入る。
○同・脱衣所・中(朝)
愛が脱衣所に入っていく。
愛「バスタオルは、そこにあるの適当に使ってね。着替えは今、持ってくるから」
実「わかった。後は適当にやるからいいよ」
愛「うん。何かあったら呼んでね」
○同・浴室
実が湯船に浸かってぼーっとしている。
実「ふー」
愛が浴室の扉を開く。
愛「着替え、こっち置いとくね」
実が裸を隠す。
実「わかった。ありがとう。置いといて」
○同・バスルーム・前
実がバスタオルで頭を拭きながらバスルームから出てくる。扉の前には愛がいる。
愛「お湯はどうだった?」
実「!?ずっといたの?」
愛「…ちょっと何言ってるのよ。そんな訳ないじゃないの」