昔の記憶 第十一話
○スーパー・中
大輔が辺りを探している。愛が近づいてくる。
愛「いた?」
大輔「いや」
実の声「おーい!こっち、こっち」
実が笑顔で近づいてくる。
実「遅いよ。みんなぁ。スゲー探しちゃったよ」
○車・中
運転席に大輔。助手席に清。後部座席に和子、愛、実と座っている。
○鈴木家・玄関
鈴木家「ただいま」
鈴木家が家に帰ってくる。
愛「お母さん、ご飯にしない?」
和子「そうね」
○同・リビング
鈴木家がリビングに座っている。
机の上には食事が並べられている。本格的な洋食。
大輔「すげー、母さん、こんな本格的な料理作れるんだ。レストランみたい」
和子「実のリクエストよ。ね」
清「頂こうか」
鈴木家「いただきます」
鈴木家が食事をする。
実が立ち上がる。
愛「お兄ちゃん、どこ行くの?」
実「トイレ」
愛が実の後をついて行く。
○同・トイレの前
実がトイレの中に入る。外で愛が待っている。愛がフーと息を吐いた瞬間にトイレのドアが開いて愛がトイレの中に連れ込まれる。
○同・トイレの中
実が愛の首筋にフォークを突きつける。
実「お前らの目的は何だ?」
愛「ちょ、ちょっと、お兄ちゃんどうしたのよ?悪ふざけもいい加減にしてよ」
実「何で家族のふりをする?」
愛「ちょっと、言ってる意味がわからないんだけど」
○同・リビング
実が愛を羽交い締めにして首にフォークを突きつけたままリビングに入ってくる。
実「そのまま動くな!」
和子「ちょっと、何してるのよ」
実「動くな!動いたら、こいつを殺すぞ!」
清「何言ってるんだ!自分の妹を殺す気か?」
実「妹なんかじゃ無いだろ!そのまま手をパーにしろ!」
大輔「実、何言ってるんだ。お前は?」
実「早く!言われたとおりにしろ!」
和子、清と大輔が手をパーにする。持っていた食器が机の上に落ちる。
実「そのまま手を上に伸ばしてゆっくり立ち上がれ!」
みんな手を伸ばして立ち上がる。
実「よし!そっちの全員壁側によれ!」
和子、清、大輔が手を挙げたまま壁による。
実が愛の後ろ手にプレスチック製の手錠を締めて和子達がいる壁に座らせる。
× × ×
愛、大輔、清、和子の順番で全員後ろ手にプレスチック製の手錠をつけられて正座をさせられている。
実「形勢逆転だな」
愛「なんの話よ」
実「まだ言うのか?」
実が後ろポケットから岩見の通帳を取り出してみんなに見せる。
実「何でこんな物がここの家にあるんだ?」
愛「何でそれを…」
大輔「何でそれをあんたが持ってるんだ?」
実「『あんた?』どうしたんだ?いやに他人行儀じゃないか?」
大輔「…」
実「俺は誰なんだ!!」
実が壁を殴る。壁に掛けていた日本画が落ちる。実が絵を受け止める。
実「(振り返り)目的は何なんだ!!」
愛「…」
大輔「…」
清「…」
和子「…」
実「(絵を床に置き)金を奪い」
通帳を見せる。
実「家族を奪い」
ポケットから新聞の切り抜きを取り出して見せつける。
実「お前らそれでも人間か!!」
愛「…」
大輔「…」
清「…」
和子「(小声で)そんな記事くらいで家族を疑うの?」
実「何か言ったか?」
実が和子に近づく。
実「何か知っているのか?」
和子「知らないわよ!何よ!本当の事を言った訳じゃないの!家族を疑うの?母親を疑うの?そんな新聞記事と母親と、どっちを信じるの?何とか言ってみなさいよ!思い出した訳じゃ無いんでしょ!」
実「(実が振り返る)…」
和子「だいたいね。例え何か知っていたとしても言っちゃダメなのよ」
実「『言っちゃダメ』?」
和子「ううん。そんなこと言ってない」
実「誰かに口止めされているのか?」
実がテーブルに置いてある、フォークを手に持って和子に近寄る。
和子「だ、誰にも、口止めされてないよ」
愛「あなたによ」
実が愛の方を見る。
大輔「ちょっと、何言ってんだよ?」
愛「いいの。だって、このままだと、あのおばちゃん、殺されちゃうじゃない」
清「いいのかい?ばらしても」
愛「いいの。だって経厳先生には人殺しに、なっていただきたくないですもの」
愛が実を見つめる。
実「どういうことだ?」
愛が立ち上がり、実に近づく。
愛「経厳先生、全てお話ししても、よろしいでしょうか?」
実「もちろんだ。そのためにこんな事をしている」
愛「では(手錠を見せる)これをはずして下さい。誰も暴れません。これでは傷害罪が成立してしまいます。大丈夫です。誰も暴れません」
愛が実を真剣な顔で見つめる。
実「わかった」
× × ×
全員の手錠がはずされる。
愛「とりあえず座りましょ」
各自、椅子だけを持ってきて座る。座り位置は先ほどと同じ。
愛「お兄ちゃん、いや、経厳先生。どこからお話すればよろしいですか?」
実改め経厳「最初っから最後まで全部だ」
愛「(ため息)ふー、かしこまりました。経厳先生には、奥様がおりました。本当に文字通り苦楽を共にされた…」