昔の記憶 第十話
○図書館・外
実が図書館に入っていく。
○同・中
実がコンピューター端末で調べる。検索結果が長い紙で出てくる。
実が資料を机の上に積み上げて調べまくる。
美術史年刊や、美術史などの美術系の本や週刊誌や新聞などが机の上に積み上げられている。
実「(小声で)岩見経厳…岩見経厳」
× × ×
『日本画の若き天才』
『大の取材嫌い』
『写真嫌い』
などの見出しが次々現れる。
× × ×
立ったまま、新聞を調べている実の手が止まる。
実「(小声で)これは…」
新聞の見出しに『著名画家一家惨殺事件』とある。
実の心の声「昨夜10時頃、日本画家の岩見経厳さんが帰宅したところ『家に強盗に入られて妻と子供が死んでいると』110番通報があり、駆けつけた警察官が岩見さん宅に入るとぐったりとした女性と乳児の姿があり、病院に搬送されましたが、まもなく死亡が確認されました。部屋が荒らされていたことから、金銭目的の可能性もみており、警察では殺人事件と断定して操作を進めています」
実がまた別の新聞を広げる。
新聞の見出しには『著名画家行方不明?』とある。
実の心の声「先日、一家惨殺事件が起こった、岩見経厳さんが突如、関係者に向けて遺書とも呼べるような手紙を残して姿を消していると事が関係者の調べで明らかになりました。自宅もすでに売却に出されており家財道具もすでに売却されており、所有していた数十枚の絵も忽然と姿を消してしまいました。一部では怪しいワンボックスカーが目撃されており、警察では岩見さんの捜索を続けております」
実が新聞の日付を見ると【2008年12月15日】
実「通帳の現金が引き出されていた日付と一緒だ…」
○鈴木家・実の部屋・中(夜・フラッシュ)
実が通帳の残高が0になっているところを眺めている。
○図書館・中
実が週刊誌を広げる。
週刊誌の見出しに『天才日本画家は失踪ではなく誘拐!?』とある。
実の心の声「当時の家政婦が語る…」
家政婦の写真が載っていて目線は入っているがどう見ても旅行先で出会ったおばちゃんの山本。
実「…この人は…」
○ホテル・レストラン(フラッシュ)
笑顔で実を見つめる山本。
山本「旦那様!」
○図書館・中
実の心の声「『私は、その日、お休みでしたので、助かったのですが、旦那様は決してあのような手紙一枚でお世話になった方々にお別れを告げる方ではございません』」
実が週刊誌のページをめくる。
週刊誌の見出しに『誘拐犯の人相と特徴公開』とある。
実の心の声「目撃者の証言によると、岩見さんは普段見かけぬ4人組となにやら話をして、そのまま車の中に押し込まれたそうです。今回、似顔絵と特徴の再現に成功しました。一人目は運転手役…」
大輔とそっくりの似顔絵。
○大輔の顔(フラッシュ)
○図書館・中
実の心の声「体型はがっしりしている。男。年齢は30から40歳くらい。二人目はおそらくナビゲーター役…」
清とそっくりの似顔絵。
○清の顔(フラッシュ)
○図書館・中
実の心の声「体型はほっそりしていて、男。年齢は50代後半から60代中盤くらい。助手席に座っていた。三人目はおそらく見張り役…」
和子とそっくりの似顔絵。
○和子の顔(フラッシュ)
○図書館・中
実の心の声「体型はややぽっちゃりしていて、女。年齢は40代後半から60代中盤くらい。後部座席に一番最後に乗り込んでいた。最後はおそらくこの誘拐の首謀者…」
愛とそっくりの似顔絵。
○愛の顔(フラッシュ)
○図書館・中
実の心の声「体型はモデル体型で、女。年齢は20代。岩見さんを後部座席の一番奥に乗せた後、その隣に座りました」
実「(小声で)誘拐…」
実が週刊誌のページをめくる。
実「え?」
週刊誌の見出しに『初公開!本誌独占!岩見経厳顔写真入手!』と書かれている。
実そっくりの写真が週刊誌に載っている。
実「え?え?」
実が頭を抱える。
実の視界がぐるぐる回る。
実が大きく息を吐き出して椅子に座る。腕時計を眺める。