幸福論 第十話
○マンションの一室・中(夜)
サンキューが真っ暗な中、月明かりを背にしてブランデーをたしなんでいる。
○同・外(夜)
ジェントルマン風の男が生唾を飲み込んでインターホンを押す。
ジェントルマン風の男が大きく息を吸い込んで扉の前で待つ。
部屋の中からは何の反応が無い。
ジェントルマン風の男が辺りをうかがってからドアノブに手をかける。
鍵がかけられて無く、開く扉。
ジェントルマン風の男が恐る恐る扉の中へ入っていく。
○同・中(夜)
ジェントルマン風の男が真っ暗な部屋の中に入っていって辺りを見回す。
ジェントルマン風の男「すいません。どなたかいらっしゃいますか?」
部屋の中からは声がしない。
ジェントルマン風の男が扉を閉める。
部屋が真っ暗になる。
ジェントルマン風の男「失礼します」
ジェントルマン風が革靴を脱いで部屋に上がる。
ジェントルマン風の男「どなたかいらっしゃいますか?」
ジェントルマン風の男が部屋に入っていく。
部屋に誰もいない。
カーテンが閉め切られて真っ暗な部屋。
風でカーテンが揺らめいていて、時折月明かりが部屋に差し込んでいく。
ジェントルマン風の男が生唾を飲み込んで風で揺らめくカーテンに近づく。
ジェントルマン風の男「ふー」
ジェントルマン風の男が意を決してカーテンを開く。
開いた窓があるだけ、ベランダには誰もいない。
ジェントルマン風の男「ふー」
ジェントルマン風の男の首に腕が巻かれる。
ジェントルマン風の男「!!」
ジェントルマン風の男の口が何者かの手によってふさがれる。
ジェントルマン風の男「フゴフゴ」
月夜に照らされたサンキューがジェントルマン風の男の首と口をふさいでいる。
ジェントルマン風の男の目が涙目になる。
サンキューがジェントルマン風の男の耳元に口を近づけて。
サンキュー「刑法第130条 正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する」
ジェントルマン風の男「フゴフゴ」
サンキューがジェントルマン風の男の耳元でささやく。
サンキュー「どうする?
懲役受けるか?
罰金払うか?
それとも、ここからすぐに出て行くか?
ジェントルマン風の男の目が涙目。
サンキュー「刑を執行するのは何も裁判官だけとは限らないんですよ」
サンキューが手を離す。
ジェントルマン風の男がへにゃへにゃと床に崩れ落ちる。
サンキューが体を下げてジェントルマン風の男と目線の位置を合わせて。
サンキュー「…どうします?」
ジェントルマン風の男「ごほごほごほ」
ジェントルマン風の男が咳き込んでから胸ポケットから写真を取り出してサンキューの目の前に掲げる。
ジェントルマン風の男「刑を執行して欲しいのは私ではなく、その写真の男だ」
サンキューが写真を見つめる。
サンキュー「…」
ジェントルマン風の男がサンキューに土下座をする。
ジェントルマン風の男「頼む!金はいくらでも払う!
この通りだ!頼む!」
サンキューが写真を手にとって立ち上がって写真を見つめる。
サンキュー「…」
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