走る男
○繁華街
人込み。
林田浩(26)が大きなボストンバックを両手に抱えて走っている。
林田が通行人の男に肩をぶつける。
林田「すいません」
林田は、走ったまま首だけを後ろに向け頭を下げる。
男の声「走れ、走れ」
○ 公園のベンチ(朝)(フラッシュ)
ベンチで寝ている林田。
○
繁華街
人込みを掻き分けて走る林田。
林田は両手に抱えた、バックを右手に
持ち替えて、左手でネクタイを緩ませる。
激しい息使いの林田。
○ 公園のベンチ(朝)(フラッシュ)
ベンチで寝ている林田に男(26)が近づく。
○ 横断歩道
青信号。
多くの人々が行き来していて、車道には多くの車がいる。
歩道を走っている林田。
青信号が点滅している。
林田が横断歩道の手前まで来る。
信号が赤に変わり、車が動き始める。
赤信号の中、走りつづける林田。
クラクションを鳴らす車達。
男の声「走れ!」
○ 公園のベンチ(朝)(フラッシュ)
ベンチで寝ている林田に近づく男の手
にはボストンバック。
○ 車道
多くの車が行き来している車道。
林田の激しい息遣いが聞こえる。
道行く車に時折、クラクションを鳴ら
されながら、右手にボストンバックを
抱えて、林田が走っている。
左手で林田はネクタイをはずし、道に
投げ捨てる。
林田は左手でYシャツのボタンを一つ、
二つと、はずしていく。
○ 公園のベンチ(朝)
ベンチで寝ている林田の脇にボストン
バックを持って立っている男。
逆光で顔は見えない。
○ 車道
車のあまり走っていない車道。
林田が車道を走っている。
顎を上げて走る林田。
林田のスーツのポケットから着信音が鳴る。
林田はスーツのポケットに左手を突っ込み、
携帯電話を取り出す。
携帯電話のストラップに絡まって、一緒に写真が出てくる。
着信音が鳴ったままの携帯電話をポケットに戻し、
写真を見る林田。
笑顔の林田と、林田と同じような年頃の妊婦と、
小学校低学年位の男の子が、
笑顔でいる写真。
林田は写真をポケットにしまいこむと、
左手で、額の汗をぬぐう。
男の声「走れ!」
○ 公園のベンチ(朝)(フラッシュ)
ベンチで寝ている林田に男が近づき、
持っているボストンバックを林田の上に置く。
○ 元の車道
林田が走っている。
林田がバックに耳を近づける。
カチカチと時計の音がする。
息を切らして走る林田。
○ 公園のベンチ(朝)(フラッシュ)
林田の右手に腕輪をマジックテープで止める男。
○ 元の車道
林田が走っている。
林田の右手にはマジックテープ式の腕
輪が巻かれていて、腕輪から、コードが伸びている。
コードの先端は、ボストンバックの中へと伸びている。
カバンの中を少し覗く林田。
デジタルの数字が二百前後を行き来している。
○ 公園のベンチ(朝)(フラッシュ)
ニヤッと笑う男。
○ 元の車道
走り続ける林田。
激しい汗をかいている林田。
○ 公園のベンチ(朝)(フラッシュ)
男が笑顔で、林田を揺り動かす。
○ 元の車道
走り続ける林田。
○ 公園のベンチ(朝)(回想)
ベンチで寝ている林田が、男に揺り動かされている。
目を開ける林田。
自分の胸においてあるボストンバックと、
右手の腕輪を見る、林田。
笑顔の男。
男の顔を見上げる林田。
男はカバンに手を伸ばして、カバンの中のスイッチを押す。
林田「何だ!お前は!」
男はニヤッと笑い。
男「死神さ」
林田は男の顔を見つめてから、カバンを開ける。
カバンの中には、爆弾。
男の顔を見る林田。
爆弾の隣にはデジタル数字が表示されている機械がある。
男「心拍数ってヤツ?」
男の顔をいぶかしげに見上げる林田。
右手の腕輪をはずそうとする林田。
男「おおっと」
男は林田の腕をつかむ。
男「はずしちゃあダメダメ」
人差し指を立てて、目の前で左右に振る男。
機械のデジタルの数字が上がる。
機械を見る男。
男「あっ、二百超えそうだね」
男を見上げる林田。
男「越える前に言っておくけど、一回超えて、
それ以下になったら…」
男は林田の目の前に右手を握ったまま
突き出してパッっと開く。
林田は男に掴み掛かる。
林田「超えたらどうすりゃいいんだ」
男は笑いながらズボンのポケットから、
ストップウォッチを取り出し林田に手渡す。
男「三時間」
男は機械のデジタル表示を横目で見る。
デジタルは百九十八。
男「我慢してね」
ケタケタと笑う男。
林田「お前ぇ」
男に掴み掛かる男。
横目でデジタル表示を見る男。
デジタル表示は、二百一。
男が外を指差す。
男「走れ!」
デジタル表示を見る林田。
○ 元の車道
林田が走っている。
ズボンのポケットからストップウォッチを取り出して見る林田。
一分四十秒、一分三十九秒。
スーツのポケットから着信音が鳴る。
ポケットに手を突っ込み携帯電話を取り出す林田。
携帯の画面を見て、携帯に出る林田。
林田「もしもし」
険しい表情の林田。
林田「どうしたんだ?」
驚いた顔をする林田。
林田「本当か?」
林田が立ち止まる。
ストップウォッチの表示は五十九秒。
林田「そうかぁ」
笑顔の林田。
心拍数は二百ニ。
林田「産まれたかぁ」
心拍数は二百。
カバンを開けて、中を見る林田。
ポケットからストップウォッチを取り出して見る、林田。
走りだす林田。
林田「そうかぁ、女の子かぁ」
林田の背後からトラックのクラクションの音。
車道の真中を走っている、林田。
後ろを振り返る林田。
林田「俺の分まで幸せになれよ」
トラックが林田の目前に迫る。
真顔の林田。
爆音が響く車道。
終わり(^o^)
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