「1・2の3」NEWver第一話

○田舎道
一台の国産乗用車が走っている。

○乗用車
田中和夫(25)が車を運転している。助手席には田中一郎(2)を抱いた田中宏美(25)が座って、シュークリームを食べている。
一郎「だーだー」
和夫「おい、一郎は2歳なのに、まだしゃべれないのか?」
宏美「あなた、危ないから前見て運転してよ」
和夫「大丈夫だって。一本道だぞ」
一郎「(和夫に向かって)だーだー」
宏美「ほら!一郎も怒ってるわよ!一郎もシュークリーム食べる?」
和夫「いやっ。笑ってるじゃないか」
宏美「違いましゅよね」
車がトンネルに入る。
一郎「(和夫に向かって)だーだー」
和夫「わかったよ。一郎」
一郎「だーだー。だーぱー。ぱーぱー」
和夫「!?(宏美を見て)聞いたか!今、一郎がしゃべったぞ!おい!聞いたか!!」
車がトンネルを抜ける。
宏美「あぶなーい!」
前からトラックが向かってくる。
クラッシュ音が響き渡る。

○タイトル「1・2の3」

○田中家・リビング(朝)
車が正面衝突している。
画面が引くと、スーツ姿の一郎(24)が食事をしている箸を止めてテレビを眺めている。先ほどの車の正面衝突の様子はテレビのニュース。
タイトル「22年後」
和夫(47)が一郎の肩を叩く。
和夫「一郎!面接は何時なんだ?」
一郎がボーッとテレビを眺めている。
和夫「一郎!」
テレビからの音「7時20分!7時20分!7時20分!」
一郎「(ハッとして)やばい!もう7時20分だ!!(ご飯を口に詰めて席を立つ)行ってきはす(振り返り)お母さんは?」
和夫「お母さんは、まだ出張だよ」

○同・玄関・中(朝)
一郎「行ってきます」
和夫「(ネクタイを手に持って)ネクタイ忘れてる。一郎ネクタイ忘れてる。ネクタイ忘れてるよ」
一郎「あっ!ありがとう」

○オフィス・会議室・中
一郎と高橋律子(23)がパイプ椅子に座っている。そわそわした様子。扉が開いて面接官が入ってくる。律子が立ち上がって面接官に会釈をする。一郎が遅れて立ち上がる。
一郎「よろしくお願いします」
面接官「お待たせいたしました。それでは面接を始めさせていただきます。募集要項にも記載させていただきましたが、この面接で合格されますと、仮採用と言うことで、まずは一ヶ月間勤務していただきます。一ヵ月後、一発勝負の本採用試験をいたしますので、その辺りを、ご了承ください」
律子「よろしくお願いします」
一郎「(少し遅れて)よろしくお願いします」
面接官「それでは順番に自己紹介をしてもらいますか。それじゃあ…そちらの女性の方からどうぞ」
律子「(硬い表情)えっと、えっと」
面接官「緊張なさらないでいいんですよ。まずはお名前からどうぞ」
一郎「(立ち上がる)田中一郎。24歳です。好きな映画はアイ・アム・サムです…」
面接官「(遮って)まだあなたの番じゃないですよ。そちらの女性の方からですよ」
律子「(笑顔で)高橋律子23歳です。前職は販売員でしたが、御社の経営理念に共感しまして是非とも御社で働きたいと思いました」
面接官「ほおー。なるほど、ちなみに弊社の経営理念はどこで知られたのですか?」
一郎「(立ち上がって)田中一郎。24歳です。好きな映画は…」
面接官「(遮って)ちょ、ちょ、ちょっと、まだ君の番じゃないからね。すいません。どうぞ。続けて」
律子「はい。日経新聞のコラムで拝見させていただきました」
面接官「ほー。では、どのような点に共感していただいたのですか?」
一郎「(立ち上がって)田中一郎・24…」
面接官「(遮って)君!出て行きなさい!」


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